内心、自分は一廉の男だと自負しているのだから、煮ても焼いても食えない。
ただの井の中の蛙で、最低である。
女を鼻からバカにしている封建バカわかしは先に女をバカ呼ばわりしたが、鼻から女をバカにしているわけではない。
バカ女をバカ女といっているだけである。
その「女」という言い方がすでに差別的だ、といわれるかもしれないが、そうではない。
「女性」「男性」という言い方が嫌いなだけである。
「殿方」などと聞くと、’その言葉の汚さに気が狂いそうになる。
ところが中年にかぎらず、若い男にも、女を最初から見下している男が多い。
だれかを見下すヤツは、かならずだれかにへつらうヤツである。
おまえが偉いんじゃないんだぞ男一流企業、大会社、一流大学、官公庁、なんでもいい。
「□とつき「大」とつき「官」とっく団体に所属していることを、自分の偉さと錯覚してのぼせあがっている正真正銘のバカがうじゃうじゃいる。
もう1回赤ん坊からやり直せ、といいたい。
だからといって、一大官でない三小民(三流で小さくて民間)が倣岸不遜であっていいというわけでもない(いっておくが、「三小民」というのは便宜上だからね)。
『毎日新聞』の投書欄に、「人間それぞれ年齢でくくるな」という見出しでこのような主張が掲載されていた(二〇〇一年十一月二旦。
「最近の若い者」と言ったら、それはだらしない者たちだという考えが定着している人がいる。
だらしのない若者を数人見かけたからといって、若者全体がそうであると思うのは間違っている。
(中略)若者とか、お年寄りとかという分類の仕方をするのは必ずしも悪いことではない。
しかし、人間を語る際にそういう分類にばかりに頼るのはあまりよいことではない。
(中略)人間はみんな違う。
これを忘れては、人間を語れないだろうと思う。
(高校二年、茨城、H・K男)これは正論である。
だがH君、ほんとうは逆で、その「違い」を「忘れ」なくては「人間を語れない」のだ。
でなければ、君のいうように「人間はみんな違う」で、一巻の終わりである。
語ることは強引であるしかない。
性善説も性悪説も強引である。
ある人の称える「性まぬけ説」というものがある。
いまのところこれに賛同しているのは中野翠ただひとりだが、これは前二説にくらべると強引度がすくないかもしれない。
なぜ人はひとくくりにされることを嫌うのか。
H君も「最近の若者は」という言い方のなかに自分がくくられることを嫌っているのだろう。
だが、だれも「最近のH君は」と固有名について語るわけにはいかないのである。
だとしたら、「最近の若者」というくくりから「最近のH君」を、「自分」じしんの判断でわけるほかはない。
わたしは、「団塊の世代」は、「おとな」は、「男」は、とくくられても全然かまわない。
わたしはそれらと重なりながら、最終的には「自分」のもとにあるからである。
H君(もうここでは、H君とは一人ひとりの若者の意味だからね)も「自分らしく」生きたいと思っているひとりではないか、と推測する。
H君のような若者にとって、それは悪いことではない。
いつも「自分」のもとにあればいいのである。
という前提において問う。
バカは子どもにも宿っているか?もちろんである。
バカな子どもは続々生産されつづけている。
おとながバカなのに、子どもだけは利発ということはありえない。
男がバカなのに、女は賢いということがありえないのとおなじである(しかしこの奇跡が、戦前までの日本にはあったとわかしは考えているけれど)。
どこまでが子どもかというと、単純にいって二十歳以前の男女すべてである。
だいたい二十歳にもなって「子ども」というのが、すでにバカである。
おまえが勝手に「二十歳」を「子ども」に数えているだけではないかといわれるとそのとおりだが、「二十歳」が「子ども」に見えるのだからしかたがない。
三十歳でもいいのだが、これは「男のバカ」に入れているから、三十歳以上がバカから免れていると思ったら大まちがいである。
子どものバカには多少同情の余地がある。
かれらはある意味では被害者でもある。
バカを養成する土壌が豊富にあるからである。
自分の親。
世間のおとな。
テレビ番組。
週刊誌。
雑誌。
ビデオ。
テレビゲーム。
ゲームセンター。
携帯電話。
ようするに、商業主義と社会現象。
こんな時代に、バカにならないで成長しろというほうが無理かもしれない。
バカな子どもはバカなおとなと瓜二つである。
それも道理だ。
バカになるにはバカの見本が必要だからである。
そのうえで、子どもたちは自分たち独自のバカ性を創造する。
それはおおむね行儀の悪さ、社会ルールの無視、世間をなめきった態度、といった形で現れるが、なんといってもかれらのバカの最大特長は、集団バカということであろう。
ひとりバカ、孤高バカがいないのである。
子どもにもストレスが溜まって、我慢のできない子や、すぐ「キレる」子が増えているとか、キオスクでオロナミンCとかリポビタンDを飲む子どもが増えていると報じられもしたが、その一方では栄養の溜まりすぎで糖尿病などの成人病にかかる子どもも増えている。
いまの子どもは親や祖父・祖母からの金漬けと過剰な愛情漬け、好きなものだけの食事による栄養漬け、ゴミだらけの情報漬けの状態にあるといっていい。
バカは女に宿り、男に宿り(つまりおとな、に)、子どもに宿る。
処置なしではないか。
親の因果は確実に子に報いているのである。
女、男、子どもときたら、もう日本人までやるしかない。
転機はやはり一九七〇年代である。
その頃から、日本人は世界のなかでも、まれに見るバカ民族になったのではないか。
このように書くと、かならず「そういうテメエは何様だ」といわれるのである(もういわれているか。
だが、その種の非難と、この言葉の嫌らしさについてはここでは反論しない。
第五章ですることになっている)。
日本と日本人にほとほと愛想をつかして、一九八八年にオーストラリアに移住した元シナリオ作家の林秀彦はこのように書いている。
わが家に出入りしている男で、ニュージーランド人のバリーという四十五歳の男がいる。
庭師兼便利屋で、なんでも野外に関することをしてくれるのだが、無学文盲、教育は小学校中退程度だ。
インテリとはとても言えない。
ところが彼の臨機応変ぶりは抜群だ。
ジョークはうまいし、何事に対しても当意即妙な応対ができる。
機転もきく。
社交術も心得ていて、どこに連れて行って、だれに会わせても恥ずかしくない。
テーブルマナー含め、礼儀を心得ている。
世界問題については一通りの会話はできる。
これは彼が頭がいいということ、利口だということになる。
ところが日本から来るお客さんで(なるべくだれとはわからないようにぼかして書くが)超一流の大学を出て、社会的にハイレペルな職業につき、高額所得者の××さんは、洒落は解さない、酔えばクダを巻く、人にはからむ、テーブルでの食べ方は汚い、ボスニア問題については何も知らない。
一緒にいるのは恥ずかしいだけだ。
これは彼が頭が悪い。
馬鹿だということになる。
で、林はつまり、日本人は「インテリジェントな民族だが、まるきりインテレクチュアルではない、ということである。
知能はあるが、知性がないのである」といっている(おまけにわたしもつけくわえておくと、金はあるが品がない。


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